「遥香さん、これ以上ここに居たら危険です。早く立ち去って下さい」
少し離れた所であたし達の様子を窺っている運転手さんらしき人。
運転手さんがいるという事は何か用事があって繁華街に来たんだろう。
遥香さんを危険な目に合わせる訳にはいかない。
だから、一刻も早くここから立ち去って貰わなきゃ。
──そう思っていたのに。
「鳳凰妃見ーっけ」
なんでこうもタイミングが悪いんだろうか。
ううん。こんな目立つ所に居たあたし達が悪かったんだ。
話すのなら、どこかビルにでも入るべきだった。
「ラッキー。俺等一番乗りみてぇだぜ?」
細い路地から現れたのは数人の男達。
あたしを見つけた事が余程嬉しいのか、こちらに向かいながら仲間同士でハイタッチしている。
……最悪だ。
よりにもよってこんなガラ悪そうな奴等が引っかかるなんて。
「……遥香さん、早く行って下さい。安全な所に行ったらあたしが此処に居るって十夜に連絡して頂けますか?
あたしが繁華街にいる事は多分連絡されてると思います。だから、この場所にいるって事だけ伝えて下さい」
「……っ、でもっ」
「いいから!早く行って下さい!!」
あたしは捕まってもいい。
でも、遥香さんを巻き込む訳にはいかない。


