「“D”はあたしを狙ってるんです」
「……っ、そうよ。だから、」
「だからです」
「え?」
「だからおとりになるんです」
「何を……言ってるの?」
狙われているのに自分から出ていくなんて馬鹿だと思う。
けど、今のあたしには必要な事なことなんだ。
鳳皇の役に立ちたい。
もう鳳凰妃じゃないかもしれないけど、それでも皆の役に立ちたい。
そう思ったからこの決断を下した。
「“D”を潰したくてもどこに潜伏しているのか分からない」
「凛音ちゃ──」
「それなら奴等をおびき寄せればいい」
「……っ、だからって凛音ちゃんがおとりになる事なんか──」
「それしか出来ないんです!!」
あたしには、それしか出来ない。
ううん、あたしにそれしか出来る事がないんだ。
こんなことで十夜に許して貰おうなんて自己満足だと思う。
それでも、十夜の為に出来る事があるのなら全てやりたい。
例え──この身を差し出してでも。
「遥香さん、心配してくれてるのにごめんなさい」
「凛音ちゃん……」
遥香さんに頼まれてもこれだけは引けない。
それにもう、あたしがこの繁華街に来た事はDにも鳳皇にも伝わってるだろうから。
Dが此処に現れればあたしの作戦勝ち。
あとは鳳皇が来るまでDをここに食い止められればあたしの役目は終わりだ。


