「……え?遥香、さん……?」
振り返った先にいたのは、紛れもないあの遥香さんで。
「なんで──」
そう言葉に出した時にはもう遥香さんに腕を引かれていた。
「遥香さ……」
人気の無いビルの脇にある細道で止まった遥香さん。
振り返った遥香さんの目には、今にも零れ落ちそうなほど涙が溜まっていて。
あぁ、知ってるんだ、と思った。
「凛音ちゃん……無事で良かったっ」
「………」
「どこに行っちゃったのかと思って、私……」
遥香さん……。
綺麗な瞳からボロボロと零れ落ちる大粒の涙。
「……凛音ちゃん、ごめんね。私、充くんがあんな風に思ってるなんて知らなくて……。私が、私がちゃんと十夜との事言ってれば……!」
「……違います!遥香さんのせいじゃないです!」
「ううんっ。私が悪いのっ!ごめ……、ごめんね、凛音ちゃんっ」
人の目も気にせず、あたしにしがみつきながら何度も何度も謝罪を繰り返す遥香さん。
その姿を見て思った。
遥香さんもあたしと同じぐらい傷付いてるって事を。
当然だよね。
信じてた人に裏切られたんだもん。
しかも、その原因が自分だったなんて哀しすぎる。
「あたしの方こそ、ごめんなさい……」
謝らなきゃいけないのはあたしの方だ。
そもそもの原因は遥香さんではなくあたしな訳で。
あたしが十夜を怪我させなければ充くんはあんな風な考え方にはならなかった。
……あたしが十夜と出会わなければ、遥香さんが信頼してた充くんのままだったんだ。


