「この辺でウロウロしてれば引っかかるだろ」
「へー、この辺にあるんだ」
「いや、もう少し先の裏通りだけど、流石にそこまで行ったらヤベェからな」
「あー、まぁ確かに。じゃあこの辺ウロウロしてよっか」
繁華街の大通りを端から端まで歩いてきたあたし達は、繁華街の先端とも言える場所で足を止めた。
買い物をするフリしてその辺をウロチョロする。
変装もせずに大通りを突っ切ってきたんだ。あたしが繁華街に現れた事がDにも伝わってる筈。
ううん。Dだけじゃない。十夜達、鳳皇の耳にも。
「充くん、来るかな?」
「……さぁ、どうだろな。あの後、シンの所にも姿現してねぇみたいだし。まぁ、元々アイツ等の目的は違うからな」
「目的が、違う……」
そうだ。充くんの目的はあたしの代わりに遥香さんを鳳凰妃にする事で、シン達の目的は鳳皇を潰す事。
あたしが真実を知って傷付けば鳳皇に隙が出来るからって理由でDは充くんと手を組んだんだ。
Dからすれば、遥香さんが鳳皇に入ろうがどうしようが関係ないこと。
充くんとの抗争に敗れた今、Dはあたしを捕らえて鳳皇との取り引きに使う事しか頭にないだろう。
まぁ、そう思ってくれてるお陰であたしはこのおとり作戦を実行しようと思った訳なんだけど。
「あ、中田、これ可愛いくない?」
「お前な、こんな時になに呑気な事言って──」
「もしかして……凛音ちゃん……?」
──でもまさか、“彼女”まで現れるなんて思ってもみなかった。


