「そっちこそ手加減してよ!」
まさか、中田とこんな風にじゃれ合う事になるなんて思ってもいなかった。
半年前じゃ絶対に考えられなかったこと。
あんなに敵対していた事がまるで夢みたいだ。
「十夜……」
昨日の出来事も全部夢だったら良かったのに。
……なんて、自分の都合のいい事ばかり何度も考えたけど、あたしは知ってるから。
十夜の腹部にクッキリと残っているあの傷跡を。
“河原の仇を討ちに来たアンタが、敵である桐谷さんを怪我させたんだよ!!”
目を覚ましてから、何度も何度も脳内を駆け抜けていく充くんの言葉。
思い出す度謝罪して、後悔する。
謝って済む事じゃないって分かってるけど、それでも謝らずにはいられない。
だって、傷付けてしまったから。
十夜の心も、身体も。
きっと十夜にもあの傷があたしのせいだってことが伝わってるはず。
そして、それを聞いて傷付いてるんだ。
あたしが“真実”を知って十夜の元に帰らなかったから。
十夜はきっと、自分のせいであたしが帰らなかったと思ってるだろう。
自分の傷のせいであたしが“自分を責めている”って、きっとそう思ってるはず。
だから、早く帰らなきゃ。
帰って十夜に謝って、十夜の事が好きだって伝える。
ずっと一緒にいたいって。
十夜とずっと一緒にいたいって、
そう伝えるんだ。


