────…
「凛音、本当にこれで良いのか?」
「うん。っていうか、何回言うのよ。アンタって案外肝っ玉ちっちゃいんだね」
「お前な……」
分かってる。心配してくれてるって事ぐらい。
でも、この方法が一番手っ取り早いと思ったから。
──あたしは今、中田と二人で繁華街にいる。
といっても、すぐ近くにbladeのメンバーが待機しているから二人っきりじゃない。
あたしと中田が危険を冒してまで繁華街に来たのには理由がある。
それは、おとりになる為。
目を覚ましてから、今どういう状況になっているのか中田から詳しく聞いた。
あたしが中田に連れられてあの工場から去った後、十夜達がDと喧嘩して勝ったこと。
けれど、D──いや、元白狼のトップ“シン”は鳳皇を潰すことを諦めていないこと。
そして、もう一度潰す為に消えたあたしを使って鳳皇を潰そうと企んでいること。
あたしは中田からそれを聞いて決断した。
Dをおびき寄せる為におとりになる事を。
「それにしても、アンタって結構頭良いんだね」
まさか中田がDにスパイを送り込んでいたなんてね。
用意周到っていうか何ていうか。
まぁ、そのスパイのおかげでこんなに詳しく内部事情を知る事が出来たんだけど。
「結構ってなんだよ。お前、さっきから言いたい放題だな」
「凛音ちゃんはいつも正直なんですー」
「威張ってんじゃねぇよ」
「いたっ。このやろう」
「……っ、おま、手加減しろよ」
「知ーらない」
頭を小突かれた仕返しにお腹にパンチを突き出すと、見事クリーンヒット。
ついでにべッと舌を出せば、お返しのお返しでガシッと頭を掴まれた。


