「貴音、十夜はどうする?」
「……連れて行かない訳にはいかないだろ」
「分かった。じゃあ連れ──」
嵐がそう言いながら立ち上がった時だった。
バンッと突然開いた寝室のドア。
「ちょ、オイッ!十夜!?」
寝室から飛び出してきた十夜はいつもの余裕なんか一切なくて、呼びかける幹部達を無視して玄関へと走っていく。
「十夜!どこ行くんだよ!」
耳にあてられている携帯電話と、寝室に入る前とはまるで別人のような険しい表情。
只事ではないと感じ取った両幹部達は一斉に立ち上がり、駆け寄っていった。
「十夜待てよ!!」
十夜の腕を引く煌。
けど、煌の声が届いていないのか、十夜は靴を履こうとするのを止めない。
「十夜!!」
煌と貴音が二人掛かりで引き止める。
二人相手に抵抗しても無駄だと悟ったのか、十夜はすぐに大人しくなった。
「……凛音が見つかった」
「は?」
「なんでそれを……」
まさか十夜からそんな言葉が出るなんて思っていなかった煌達は、驚愕に目を見開いた。
「聞いて──」
「十夜、その電話か?」
「……あぁ」
未だ十夜の耳にあてられたままの携帯。
それが原因だとすぐに分かった貴音は、「何があった?」と十夜に問いかけた。
「──凛音と中田が繁華街にいる」
-客観的視点 end-


