「……アイツは俺達の知らない所で苦しんでたんだな」
凛音の耳に入らないよう胸の内に閉じ込め、一人で悩んでいた十夜。
それなのに、こんな形で凛音に知られてしまうなんて……。
「……遊んでるアイツを見た十夜は“あの時”のリンを思い出したんだろうな」
獅鷹の倉庫で慎達と遊んでいた凛音。
あの時、十夜は様子がおかしかったのはこの理由があったからなのだろう。
自分だけが知る“あの時”の凛音の姿。
我を忘れ、仲間を傷付けた敵をなぎ倒していくあの姿を知っていたから十夜は様子がおかしくなったのだ。
「悪いのはアイツだけじゃない。凛音に黙ってた俺等も悪い」
「……そうだな。遊大がやられたのは鳳皇の傘下、白狼だって言ってれば……いや、あの時凛音を止めていれば二人が出会う事はなかった。
そして……あんなにも傷付かずに済んだんだ」
「貴音……」
「一昨日、時間を割いてでも凛音に話してれば……」
そう嘆いたところでどうする事は出来ないと分かっているけれど、それでも後悔せずにはいられない。
「──貴音、今更“たられば”の話をしても仕方ねぇだろ。俺等がしねぇといけねぇのは凛音を見つける事だ」
「……そうだな」
“たられば”の話をしても仕方ない。
そう言った煌も心の中では後悔で一杯だった。
一昨日、十夜が獅鷹に出向こうとしたのは凛音が十夜の傷に関係していた事を明かす為。
混乱を招かぬよう、前以て凛音に打ち明けようとしていた。
けれど、充が運び込まれた事によってその機会を逃してしまい、結果、外部の人間から凛音に伝わってしまった。


