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『テメェ等!桐谷を止めろ!!』
『……っ、無理で……ゥグッ……!』
『チッ、役立たずが!!』
シンに迫り来る漆黒の獣。
それは、未だ嘗て誰も見た事のない“黒皇” 、桐谷 十夜の姿だった。
地獄絵図のようなその光景は、小汚い部屋ではなく薄暗い倉庫の中でもない、今すぐ出たいと切に願っていた“屋外”で。
辺りには黒皇の餌食になった百単位の人間が無残に転がっていた。
『うぁ……っ、』
『カハッ……!』
呻き声や悲鳴が上がる中、容赦なく次々と薙ぎ倒していく漆黒の獣。
『シンッ!!』
『……クッ』
その野生の獣と化した十夜に流石のDも焦り始めていた。
当然だろう。
豹変した十夜はシン達にとって想定外の事だったから。
シンの計画は簡単に言えばこうだった。
東條 凛音のせいで大怪我をした桐谷 十夜。
その真実を中田から盗み聞きしていたシンはそれを利用しようと考えた。
東條 凛音が鳳皇と獅鷹の架け橋となっているのは誰が見ても一目瞭然。
シンはそこに目をつけた。
充を“D”に招き入れ、鳳皇に潜入させて内情を探らせる。
そして、充の目的である東條 凛音を追い詰めながら鳳皇を内側からジワジワと破壊。
少し突けば簡単に壊れてしまうその時こそ絶好のチャンス。
これで全て上手くいく。
シンはそう確信していた。


