ある一件の小洒落たカフェから出てきた四人の男達。
その男達を視界に捉えた瞬間、あたしの勘が働いた。
この男達が“怪しい”、と。
直ぐ様足を止めたあたしは建物に身を隠し、男達の様子を窺う。
するとその直後、あたしの勘が見事的中。
会話に出てきた“総長”、“倉庫”という言葉と、“さっきの喧嘩”、“放置”、“ボロボロ”という言葉。
それらを分析すると、この男達が遊大と同じ暴走族に属していて、しかも遊大の状況とピタリ一致する。
あたしは“確信”した。
──間違いない。遊大をやったのはこの男達だ。
『今日は総長達倉庫に居んのかなぁ』
『どうだろうな。あっちへ行ってんじゃね?』
『またかよ。っていうか今チームの状況どうなってんの?いつ奴等を叩き潰す訳?』
男達はあたしの燃え滾る怒りなんて知る由もなく、自身の不満を吐き捨てながら歩みを進めている。
──どうする?出て行って遊大を病院送りにした理由を問い詰める?
……いや、駄目だ。あたしは出て行けない。出て行っちゃいけない。
此処で出て行けばタダじゃ済まないという事ぐらい馬鹿なあたしでも解る。
女ならまだしも、今のあたしは男の姿。
手加減なんてしてくれないだろう。
それに、遊大を捜す代わりに危険な事はしないとさっき貴兄と電話で約束したばかりだ。
だから、心配かけない為にも今は突っ込んで行かない方がいい。
“捜し者”を見つけたあたしがするべき事はただ一つ。
『……もしもし直弥さん?遊大をボコッた奴等見つけた。今、BCの裏にあるカラオケの前に居るから今すぐ来て』
直弥さんを呼ぶことだ。


