「分かった?アンタは桐谷さんの隣にいるべきじゃない。遥香さんの事を抜きにしてもアンタは鳳皇にいるべき人間じゃないんだよ!」
「もうヤメロ!!」
「テメェ、ぜってぇ許さねぇ!!」
優音と遊大の怒声がビリビリと反響する。
けれど、その怒声はあたしの脳には一切留まらずそのまま耳を筒抜けていった。
まるで四方八方を分厚い壁で囲まれているかのような不思議な感覚。
そんな感覚に支配され始めていた時。
「なっ!?煙幕弾!?」
「……っ凛音!!」
「離せっ!!凛音!!」
突然視界に映り込んできたのは白い煙。
そして、それと共にざわめきたった倉庫内。
「凛音!凛音!!」
声は聞こえるのに返事が出来ない。何も考えられない。
今、脳内を占めているのは“ごめんなさい”という言葉だけ。
「凛音……」
視界が真っ白になってどれほど時間が経ったのだろうか。
俯くあたしの耳に届いたのは哀しみに溢れた声。
「────」
たった一言。
その一言は僅かに残っていたあたしの思考を確実に揺るがした。
“ごめんなさい”
あたしはもう、その言葉に縋りつく事しか出来なかった。