ドスの利いた呻り声。
漆黒の双眸に一筋の閃光が走り抜け、緩んだ空気が一瞬にして凍りついた。
十夜から放たれるのは恐ろしい程の威圧感。
それを傍で感じていた幹部達は自身の怒りをも忘れ、その姿を食い入る様に見つめた。
ゴクリ、誰かの喉元が小さく鳴る。
充満する異様な緊迫感と緊張感に息苦しさを感じていたその時、それを打ち破った者が一人居た。
『俺は手、出してないですよ?逆に手も足も出された方なんだけど』
それは、他の誰でもない十夜の電話相手、チヒロ。
「あぁ゙?」
『いえ、こっちの話です』
十夜の声色とは反対に、陽気な声を放つチヒロはクスクスと小馬鹿にした様に笑う。
それが十夜の怒りを余計に増長させた。
「テメェ、何の目的があって──」
『十夜!遊大はそこに居ない!遊大は此処に居る!倉庫に居るの!』
「……っ、凛音!?」
突如聞こえてきたのは凛音の声。
求めていたその声に十夜の表情が大きく変化した。
傍に居た幹部達もまた受話口から洩れた凛音の切羽詰まった声に声を上げる。
「凛音、お前大丈夫──」
『あたしは大丈夫!何もされてない。それよりも、今、チヒロが倉庫に来てる。
チヒロ達は此処に来る前に外に待機していた慎達を襲撃したらしいの。でも、それを中田が加勢してくれた』
「中田が?じゃあ中田は今……」
『此処に居る。けど、そっちに居る筈の遊大も此処に居るの』
「遊、大も?」
再度告げられたその言葉に十夜の眉根が引き寄った。
当然だろう。
此処に居ると思っていた遊大が決戦の場である工場跡ではなく鳳皇の倉庫に居るのだから。


