「まぁ良いさ。アンタ一人が現れた所で痛くも痒くもない」
「……一人じゃないって言ったら?」
「それでもアンタは俺等に手が出せない」
「何?」
緩く曲線を描いた口端と意味深なその言葉に中田の眉根が訝しげに引き寄った。
当然だろう。
中田は一人じゃないと言ったのだ。
それは、裏を返せば仲間が大勢居るという事になる。
それなのに何故冷静でいられる?
何故余裕でいられる?
分からない。
その表情に一体どんな意味があるのか。
今のあたしには検討もつかない。
けれどその直後、その“意味”を知ることになった。
──最悪なカタチで。
「チヒロさん。予定が変更になりました」
「……っ、」
嘘……。
突然現れたその人物に、正常だった筈の呼吸が一瞬にして遮断された。
同時に見開かれた双眸は“ある人物”を捉え、凝視する。
なん、で……?
一変した空気。
それもその筈。
倉庫の入り口から入ってきた男達の中に、此処に居る筈の無い人の姿があったから。
チヒロ側の人間だと思われる男二人に連れられてきた男。
それは──
「遊大!!」
工場跡に居る筈の遊大だった。
……なんで。
なんで遊大が此処に居るの!?
工場跡に居る筈の遊大がなんで……!?
前屈みになっては居るけど、背格好、髪型、どれを見ても遊大にしか見えなくて。
「遊大……」
けれど、その姿は普段の遊大とはかけ離れていた。
服は汚れ、髪の毛はグチャグチャ。
痛々しいその姿にじわりと涙が込み上げてくる。


