シン、としたリビングで固まったままのあたし達。
……今のは一体何だったのだろうか。
口に出さずとも互いの瞳がそう問い掛け合っていた。
拍子抜けというか何というか。
奴等が何をしたいのかイマイチ理解出来ない。
まぁ、特に何も無かったから良かったと言えば良かったのかもしれないけれど。
『い、一件落着?』
『はぁ……多分、』
どうやら充くんも理解出来ていないようだ。
『充くん、これ十夜達に言った方がいいよね?』
『そ、そうですね。その方が良いかと。俺、総長に今の事電話してきます。下の奴等にも警戒するように言ってくるんで』
すみませんが待ってて下さい。
そう言った充くんは足早にリビングを出て行ってしまった。
それから本当に直ぐの事だった。
奴等、“D”がこの倉庫に乗り込んで来たのは。
電話をしに行った充くんがリビングに戻って来てから十数分後。
充くんとお茶をしながら談笑をしていると、突如外から聞こえてきた大きな衝撃音。
それは、何かが壁の様な物にぶつかった様な音で、あたし達は直ぐに何かあったのだと察した。
『……っ、凛音さん、此処で待ってて下さい。俺が見てきますから』
血相を変えてリビングから飛び出していった充くんとは反対に、ソファーから一歩も動けないあたし。
その時にはもう既に頭の中は悪い予感で一杯だった。
シンから電話があった直後の出来事。
嫌でも“D”絡みだと分かる。
『凛音さん、智広が……いえ、チヒロが乗り込んできました!』
……やっぱり。
充くんが放ったその言葉に、はぁ、と深い溜め息が出た。
すんなりと引き下がったのは乗り込んでくる予定だったからなのか。
漸く気付いたシンの思惑。
それに気付いた時にはもうあたしは決意していた。
『──あたしが、出る』
鳳皇(ここ)を護ることを。


