なんで。どうして。
その言葉が脳内を占めていく。
今、遊大はどうしているのか。
なんで遊大が連れ去られなければならなかったのか。
聞きたい事は山程あるのに、どの言葉も声にならない。
『河原を攫った理由が知りたければお前が此処へ来い』
『なっ……!?』
『知りたいんだろう?さらった理由を』
『……っ、』
含みのあるその口調にグッと言葉が詰まる。
……もしかして、電話をしてきたのはあたしを誘い出す為?
だとしたら──
『凛音さん、』
充くん。
そっと引かれた腕に振り向けば、難しい表情をした充くんと目が合った。
次の瞬間、駄目です、と茶褐色の双眸に訴えられる。
フルフルと左右に振られる頭。
……分かってる。分かってるよ、充くん。
『行かない』
自分の置かれている立場、ちゃんと分かってるから。
敵地に乗り込むなんて馬鹿な真似、絶対にしない。
『アンタの誘いになんか絶対に乗らないから。遊大は皆が取り戻してくれる』
皆があたしに約束してくれた。
遊大を連れ戻してくれると。
“D”を倒してくると。
そう約束してくれた。
だから、あたしは此処で大人しく待ってる。
皆に心配掛けたくないから。
皆のお荷物にはなりたくないから。
『ざーんねん。じゃあ諦めるか。じゃあな』
『ちょ……!?』
──プツン。
呼び止める暇も無く途切れた通話。
『………』
『………』
余りにもアッサリしたその引き際に、あたしと充くんは顔を見合わせずにはいられなかった。


