Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


なんで。どうして。

その言葉が脳内を占めていく。


今、遊大はどうしているのか。

なんで遊大が連れ去られなければならなかったのか。


聞きたい事は山程あるのに、どの言葉も声にならない。



『河原を攫った理由が知りたければお前が此処へ来い』


『なっ……!?』


『知りたいんだろう?さらった理由を』


『……っ、』


含みのあるその口調にグッと言葉が詰まる。


……もしかして、電話をしてきたのはあたしを誘い出す為?


だとしたら──


『凛音さん、』


充くん。


そっと引かれた腕に振り向けば、難しい表情をした充くんと目が合った。


次の瞬間、駄目です、と茶褐色の双眸に訴えられる。


フルフルと左右に振られる頭。


……分かってる。分かってるよ、充くん。


『行かない』


自分の置かれている立場、ちゃんと分かってるから。


敵地に乗り込むなんて馬鹿な真似、絶対にしない。


『アンタの誘いになんか絶対に乗らないから。遊大は皆が取り戻してくれる』


皆があたしに約束してくれた。


遊大を連れ戻してくれると。

“D”を倒してくると。


そう約束してくれた。


だから、あたしは此処で大人しく待ってる。


皆に心配掛けたくないから。

皆のお荷物にはなりたくないから。



『ざーんねん。じゃあ諦めるか。じゃあな』


『ちょ……!?』


──プツン。


呼び止める暇も無く途切れた通話。


『………』

『………』


余りにもアッサリしたその引き際に、あたしと充くんは顔を見合わせずにはいられなかった。