「──俺か」
倉庫を出発してから約数十分。
終始和やかとも言える会話が繰り広げられていた車内に一つのコール音が鳴り響いた。
電話の持ち主は煌。
状況が状況なだけに、車内の空気が一瞬にして張り詰められる。
煌はチッと小さく舌打ちをした後、座席の上に置いていた携帯電話に手を伸ばした。
「……千暁?」
電話の主は鳳皇のメンバー、千暁。
千暁は煌達よりも先に西沢工場跡へと向かっていた。
予定通りにいっていれば今頃工場跡に着き、各自配置に着いている筈。
その千暁から電話掛かってきたという事は何か問題があったに違いない。
十夜達は瞬時にそう察した。
「もしもし、千暁か?何があった……あ゙ぁ?」
電話に出るや否やその端整な顔を歪ませ、電話の主に疑問を投げ掛ける煌。
その声色は恐ろしい程低い。
「煌」
一変した声色に十夜達の顔色も変わり、言い表せない程の緊張感が車内を襲う。
「……分かった。取り敢えず俺達が行くまで耐えろ。折り返し連絡する」
数回のやり取りを終え、切羽詰まった表情で電話を切った煌は早々と顔を上げ、口を開いた。
「……ヤベェぞ。千暁達がアイツ等にやられてる。いや、千暁達だけじゃない。獅鷹、鳳皇両傘下達全員もだ」
「なっ……!?」
煌の口から放たれたのは予想だにしなかった言葉。
それは、抗争の開始宣告だった。
-客観的視点 end-


