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-客観的視点-
「浮かない顔だな」
「………」
「そんなに凛音が心配か?」
「………」
「お前、ホント凛音の事となると分かりやすいよな」
「……うるせぇ」
鳳皇、獅鷹両幹部達が出発して早数十分。
両幹部達が乗るワゴン車は目的地まであと数キロという所まで来ていた。
工場跡へ向かっているのはワゴン車二台。
先頭車には十夜、貴音、煌、慧、優音の五人が乗っていて、後車には嵐、時人、陽、彼方、壱が乗っていた。
そして、各車に運転手が一人ずつ。
普段運転している壱は万が一の時の事を考えて後部座席へと回り、体力を温存していた。
「まぁ、お前の気持ちも分からなくはねぇよ。今までアイツを一人にして良かった試しがねぇからな」
「………」
溜め息混じりに吐き出されたその言葉に十夜の表情が更に曇る。
“今までアイツを一人にして良かった試しがねぇからな”
それは、十夜が一番気にしていた事だった。
貴音の言う通り、凛音を一人にして良かった試しがない。
それは経験上ハッキリと言える事で、幾度なく十夜の心を苦しめてきたもの。


