「みんな行っちゃったよ?」
最後に残った十夜に視線を移せば、十夜は壁に凭れながら不機嫌丸出しの表情であたしを見ていた。
「十夜?」
なんでそんなに不機嫌なの?
「行ってくる」
「え!?ちょ……!」
何!?
突然歩き出したかと思えば何故か擦れ違い様に頭を掻き乱され。
手が離された時には頭の上が鳥の巣状態になっていた。
「ちょ、いきなり何すんの!?」
「……さぁ」
「はぁ?」
何それ!?意味分かんないんですけど!
わざとらしくツーンとそっぽを向いた十夜に疑問符しか浮かばず。
全く、何がしたいのかサッパリ分からない。
まぁこんな時に怒るのもどうかと思い、敢えてそれ以上は突っ込まなかった。
取り敢えず、最後のエールを送ろう。
「十夜、危なくなったら逃げてね」
「……あ?」
「奴等なんか武器持ってるかもしれないじゃん!前ナイフ持ってたし!」
そうだよ!自分で言ってから気付いたけど、アイツ等ナイフ持ってるかもしれないじゃん!
ヤバイ、十夜が刺されちゃう!
「十夜、刺される前にトンズラかまして!ね!?」
「阿呆か。逃げねぇし」
「駄目駄目駄目駄目!逃げなきゃ刺されちゃう!」
「刺されねぇよ」
「そんなの分かんないじゃん!」
奴等絶対卑怯な手使ってくるんだから!


