「まぁまぁ、凛音落ち着けって」
いつまでも玄関を睨み付けていると、貴兄がポンポンと宥める様にあたしの頭を撫でてくれた。
単純なあたしはその仕草に絆され、大人しくなる。
「良かったじゃねぇか、頭打たなくて。もし打ってたら更に馬鹿になってたかもな」
「は?はぁー!?」
ちょっと!それどういう意味よ!
大人しくなったのも束の間、嵐ちゃんの失礼発言に再び声を上げる。
「あーそれ困るわー。今でもりっちゃんに勉強教えんの苦労してんのに」
「ちょ……!」
「凛音お馬鹿さんだもんな。ま、俺も同類だけど」
「陽くん、そんなホントの事言ったら駄目だよー」
「……時人、それ、思ってても言っちゃ駄目だから」
彼方が嵐ちゃんに同意したかと思えば、その彼方に更に同意する陽。
しかも、時人くんなんてのほほーんと笑顔で貶してるし!
って言うか慧くんもそこは否定しないんだね!
「凛音、気にすんな。馬鹿は生まれつきなんだから」
「ドンマイ」
ちょ、貴兄と優音まで……!
しかも生まれつきとかフォローになってないし!
と言うか、これがお見送りの挨拶だなんて誰が思うだろうか。
あたしの返事なんて全く聞かず、「じゃあ行ってくるなー!」とまるで普通に出掛けるかの様に満面の笑みで出て行ったみんな。
しかも出て行く時、ハイタッチの代わりとでも言う様にポンッと頭に手を乗せられ。
……まぁ、若干一名、叩いた奴も居たけれども。


