その他に四、五人下っ端と思われる人達がワゴン車から降りてきたかと思ったら、息つく暇も無く優音と遊大に襲い掛かってきた。


カイは優音へ。キョウは遊大へ。

それに加え、下っ端達までも。


幹部と下っ端同時に襲われた二人は苦戦を強いられ、加勢しようとした慧くんは倒した筈の下っ端達に道を阻まれた。



幹部プラス下っ端数人。


優音と遊大が強いと言っても同時に来られては簡単に倒せない。

少しでも隙を見せればすぐにやられる。


その“隙”は時間が経つにつれて見え隠れし始め、結果二人は捕らえられてしまった。



ワゴン車に連れ込まれる二人。


遊大が先に連れ込まれ、その後に優音。


だが、優音が車内に連れ込まれた次の瞬間、優音は遊大の強烈な蹴りによって宙に投げ出された。


受け身を取る暇もなく地面に叩き付けられた優音。


右半身の怪我はその時に出来たものだった。


痛みに堪えながら顔を上げた優音が見たモノ。


それは、押さえ込まれながら『逃げろ!』と叫ぶ遊大の姿と、悔しげに歪められたキョウとカイの姿。


それを見た瞬間、優音は遊大に助けられたという事を理解した。


直ぐ様立ち上がり、遊大を助けようと足を踏み出す。


だが、その時にはもう既に遊大を乗せたワゴン車は動き出していてどうする事も出来なかった。


発進しながら勢いよく閉められた後部座席の扉。


それとほぼ同時に聞こえてきた貴兄達の叫声。


それを聞いた優音は、何故奴等がもう一度自分を連れ去ろうとしなかったのかを悟った。


既に車が動き出していたというのもあっただろうが、一番の理由は此方に向かって走ってくる三人の姿が見えたから。


だから奴等は優音を置いて去っていったんだ。