カーブが多い山道。


当然先が見えず、車の認識は難しい。


そのせいで奴等が此方に向かっている事に気付かず、エンジン音に気付いた時には前方のカーブから一台の得体の知れないワゴン車が現れていた。


薄汚れたグレーの外装と所々に見られる大小の傷や凹み。


後部座席だけではなく運転席にまで貼られたフルスモークが一般人の車ではない事を物語っていた。


直ぐに危険を察知した三人は足を止め、電話中だった慧くんはすぐに貴兄を呼び寄せた。


けど、貴兄達はまだ工場付近にいる。間に合わない。


自分達だけでやるしかないと判断した三人は、ワゴン車から降りてきた男達に向かって構えた。


けれど、その男達は三人に向かってくると思いきや、慧くんには見向きもせず、一直線に優音と遊大に向かっていったと言う。


それを見た慧くんはこう思ったらしい。


“D”は最初から遊大と優音だけを狙っていた、と。



奴等が何故二人を狙ったのかは分からない。


優音なら未だしも、遊大が拉致られる理由って一体……?


貴兄達は難しい表情をしたまま何かを考え込んでいたが、結局何の答えも出ないまま説明が続けられた。




“D”に狙われた優音と遊大。


優音が言っていた“遊大に二回助けられた”というのはこの時の事だった。


一回目は奴等に拘束されそうになった時。


優音に襲い掛かった敵は遊大より一人多く、そのせいで少し手こずった。


慧くんが加勢し、拘束されそうになった優音を遊大が無事奪還。


だが、その後反撃に出ようとした三人の前に新たなワゴン車が現れた。


さっきのボロボロのワゴン車とは違い、まだ真新しさの残る黒塗りのワゴン車。


そのワゴン車から出てきたのは、“D”の幹部、キョウとカイだった。