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「優音、そんな身体で本当に行くの?」


「行く。行って遊大を取り戻す」


「………」


「んな顔すんなって」


「だって……」



心配なんだもん。


また怪我したらって思うと……ううん。怪我どころか今度こそ拉致されるかもしれない。


現にさっき、“D”に連れ去られそうになったのだから。可能性は十分にある。



実は工場跡で遊大が奴等に拐われた時、優音も一緒に連れ去られそうになった。


けど、運良く遊大が助けてくれて連れ去られずに済んだ。


工場跡での出来事を簡単に説明すると、貴兄達は工場跡に着いた後、再度下調べをする為二手に分かれたらしい。


貴兄、嵐ちゃん、時人くん。

そして、慧くん、優音、遊大。


貴兄達は夜に調べられなかった工場内を。

慧くん達は工場周辺を。



下調べは難無く終わり、一通り調べ終えた慧くん達は駐車場に向かいながら貴兄に“今から向かう”と電話をした。


慧くん達三人が歩いていたのは駐車場から五十メートル程離れた下り坂。


三人はその下り坂を少し下った所にある第二駐車場へと向かっていた。


本当なら工場に一番近い第一駐車場へ駐車するのだが、そこは閉鎖されていた為少し離れた場所にある第二駐車場へ駐車する事にしたらしい。


優音達が奴等に襲われたのはその第二駐車場に向かっている時だった。