脳裏に浮かぶのは最悪な映像。


「……っ」


嫌だっ!


「貴兄、優音は!?」


居ても経ってもいられなくなったあたしはその場から駆け出すと、直ぐ近くまで来ていた貴兄の胸元を思いっきり引き寄せ、力一杯前後に揺らした。


「凛音、落ち着け!」


苦しそうに顔を歪ませる貴兄。


けれど、今のあたしには手加減なんて余裕、全くない。


だって、優音が大怪我してるかもしれないんだよ?

それなのに、冷静でいられる訳ないじゃない!


「凛音!」


貴兄の呼び掛けに頭をブンブンと横に振る。


──嫌だ。


遊大だけじゃなく優音まで大怪我だなんて、そんなの絶対に嫌だ!



脳裏に過るのは“あの時”の事。

一年前に起きた、あの事件。


遊大が喧嘩し、大怪我を負ったあの事件が脳裏にリアルに蘇った。



ボロボロになった遊大の姿。

真っ白なベッドに寝ているあの痛々しい姿が今も脳にこびりついて離れない。


言い様のない感情が溢れ出し、あの時の感情にまた支配されそうになる。



『ごめん』と拳を握り締めながら貴兄達に謝罪した遊大。


『動かねぇ』と苦痛に耐えながらリハビリする遊大。


あたしはもう、あんな姿見たくない。

大切な人のあんな姿、見たくない。


だから。


「貴兄、優音は──」


「凛音」


「……っ、優音!」