それから、あたしは十夜の心に秘められた両親への想いを十夜の口から直接聞いた。


お父さんとお母さん、そして、二人が亡くなった後、十夜を助けてくれた遥香さん達家族への想い。


そして、蒼井家当主、蒼井宗次郎への想い。


初めこそお爺さんの事を恨んでいたけれど、それはやがて時と共に風化していったと十夜は言った。


ううん、時間だけじゃない。


遥香さん達家族と大切な仲間が十夜の傍にいてくれたからだと。


闇に支配されていた感情を家族の愛と仲間の愛に救われた。



「──そして、お前にも救われたんだ」


「……え?」


あたしにも?


「お前と出逢って、“愛”を知った」


「とお──」


首に回していた腕をそっと外され、振り返った十夜があたしの腰に両腕を回し、抱き締める。



「家族への愛とか仲間への愛とかじゃない。俺が一番知りたかった“愛”を知る事が出来た」


「知りたかった、愛?」


「あぁ、子供の俺には理解出来なかった感情」



それは──“異性を心の底から愛するという事”



「“大きくなったら十夜にも分かるわよ”って母さんが照れくさそうに言ってたけど」


「十夜……」


「今なら母さんの気持ちがよく分かる」


「わっ」


いきなり押され、グラリと後ろへ倒れる身体。


それはやがてぼすんと優しくベッドに受け止められ、次の瞬間には十夜があたしに覆い被さっていた。