Ri.Night Ⅴ ~Final~【全完結】


「理由はまた後で十夜から聞いて。……あ、でも一つだけ言っていいかな?」


「あ、はい」


「十夜は私の為に別れたんじゃない。自分の為。自分の欲望の為に別れたの」


「……自分の、欲望の為?」


「そう。ご両親が亡くなってから十夜が初めて見せた欲望。……だから別れたの。十夜の幸せの為に別れた」


「十夜の、幸せの為……」


十夜の欲望って一体何……?


遥香さんと別れてまで欲したものって一体……。


「まさかあの時はこうなるとは思ってもみなかったけどね」


……え?


「それってどういう……」


意味深発言に眉根を引き寄せ、首を傾げた――その時。


「凛音!遥香さんお待たせ!」


「りっちゃぁぁぁん!俺寂しかったぁ~」


勢い良く開いた扉から陽と彼方が充くんを抱えながら入ってきた。


「充くん!」


充くんを見たあたし達は直ぐ様会話を中断し、充くん達の下へと駆け寄る。


「充くん大丈夫!?」


「彼方、陽、充くんをソファーに連れていってあげて!」


傷だらけの充くんを見た瞬間、遥香さんの顔色が一変したのが分かった。


否、遥香さんだけじゃない。あたしも同じだ。


それほどまでに充くんの顔は傷だらけだったから。


充くんの顔には至る所に擦り傷があり、口端には殴られた痕。


辛うじて原型は留めているが目蓋は腫れ上がっており、髪も服もボロボロ。


二人に支えられてどうにか歩けるという状態だった。


「充くん……」


変わり果てた充くんの姿に何とも言えない感情が込み上げてくる。


アイツ等、絶対に許さない。


利用するだけしておいて用済みになったらリンチだなんて、本当に腐ってる!