ふと頭に浮かんだのは“二人が別れた理由”。
物凄く気になるけど、でも、それは二人の事だからあたしが聞く事じゃないと思う。
遥香さんは十夜の事が大好きで、その好きな人と別れた。それは物凄く哀しくて辛かったに違いない。
聞いたらきっとその時の事を思い出す。
それに、今十夜と付き合っているあたしが別れた理由を聞くだなんて、そんな無神経な事出来ない。
だから。
「大丈夫です。色々教えて頂きありがとうございました」
これ以上は聞かない。
だって、もう十分教えて貰った。
十夜の愛を、知らなかった十夜の愛を十分過ぎる程教えて貰った。
だから、これ以上は聞かない。
そう思っていると。
「ふふ。凛音ちゃん優しいんだから」
「へ?」
またもや肩を揺らして笑い始めた遥香さんに素頓狂な声が飛び出した。
え?え?何で笑われてるの?
「別れを告げたのは十夜からよ」
「え?」
何の脈絡もなく話し始めた遥香さんにこれでもかという程目を見開く。
まさか遥香さんから切り出してくるとは思わなくて、グッと息を呑みながらその綺麗な笑顔を真っ直ぐ見つめた。


