「…駄目ですリーダー。携帯にも通信にも出ません」


「…そうか。ありがどう菜々子」


今、特課部本部にはリーダーと菜々子と康と秀星しかいない。


そう。いつも元気一杯の胡桃が来ていないのだ


「はぁ~。胡桃のやつ。いつまで無断欠勤するつもりだ?」


欠伸をしながら自分のデスクに行き仕事を始めた秀星。仕事と言ってもボスに渡す報告書


それは秀星だけでなく皆も行わなければならない仕事の一つ。胡桃以外の皆は戦車のアルカナ、皇帝に仕えていた番犬について。そして連続暴行事件の犯人であった大介については胡桃の仕事。


しかし、当の本人はいない


「学校には行ってるみたいだけど外出はあまりしてないってさ」


「康さん、親御さんに連絡したのですか?」


「心配だからさ。一番ダメージを受けたのは胡桃でしょ?葬儀にも参列しなかったみたい」


「私たちがもっと早く駆けつけていれば、少しは辛さを分ける事ができたかもしれませんね」


皇帝に仕えていた番犬は一筋縄にはいかず手こずってしまい胡桃の所へ行くのが遅れてしまったのだ。


計算では番犬は直ぐに片付けるはずだったがそうにはいかなかった。


「リーダーどうするんすか?気持ちは分からなくはないっすけど無断欠勤がボスにバレたらヤバいと思うんですけどー?」


「………………」


リーダーは黙ったままだった。


康は警察が極秘にしていた容疑者候補リストをもう一度確認した。


「胡桃の幼なじみの名前は無し。書いてあったら心の準備ぐらいは出来たと思うけど」


「しかしなぜ彼がアルカナの同化に襲われたんでしょうか。それが謎です」


「恐らく逆位置の戦車のアルカナだろう。彼なりに悩みがあったんだ。それを楽にするために昼間、胡桃に会いに行ったのかもしれない」


戦車のアルカナの逆位置は暴走、自分勝手、失敗、焦り、挫折、イライラ、視野の縮小、好戦的など…


「まだ十六才ですからね…」


「菜々子。それは関係ない」


黙っていたリーダーが不意に口を挟んできた。


「胡桃は特別課外刑事部の意味を理解していたはずだ。あいつは任務を遂行したのにも関わらず私情により無断欠勤。これが続くようなら胡桃はクビだ」