AM7:40分。

 大神は、朝一番に出勤する。

 いつもなら30分には課に入っているのだが、今朝は思わぬ道草を食ってしまったから、10分遅れでのスタートだ。

 パソコンと、コピー機の電源を入れてから、ブラインドを上げ、窓を少し開けて空気を入れ替える。

 爽やかな朝の風を受け、伸びをひとつした時____

 カラスが一羽、目の前を横切った。


 あれ、不吉?
 今朝の夢といい、彼はゲンを担ぐタイプだった。


 「はよっす。課長、早いっすね~」

 8:00になると、早出の課員がチラホラと出勤してくる。

 以前、若い奴に『上司が先に出てくると、煩い』と言われたことがあるが、そこまで部下に気を使ってやる必要もない。

 8:25。
 キッチリ管理主義の彼は、皆の出社状況を確認するために、部屋全体を見渡すのだが…

 ああ。いつもどおり、赤野が遅刻だ。
朝、ちゃんと言ったのにな。
 

 予め、怒鳴る用意を整える。3年目、最早業務課の朝の風物詩となっている儀式だ。

 ところが……

「おはようございま~す」

 今朝に限って、元気良く間延びした声が入り口から聞こえてきたじゃあないか。

 何っ!?

 大神はサッと青ざめた。

 信じられない。
 赤野が定時までに来た。

 やっぱり今日は、何かがおかしい…