眼下からびゅうびゅうと吹きすさぶ風が目に染みて、頬をすべり落ちた一粒が涙だと気付くのに時間がかかった。



「泣くの、久しぶりだな」



生理現象としての涙だ。痛みを感じて、涙を流した。

その事実は私が生きていることを肯定しているようで、少し嬉しい。


感情が昂って泣くことは、もう全く無くなった。
泣く気力なんて、根こそぎ奪われてる。



「わ……思ったより高い」



フェンスをよじ登ったら、屋上へのドアをバールで叩き壊した時にできた傷が、余計に痛くなった。

自傷行為の時とは違う、鈍い痛み。


吹き上がる風が制服のスカートや髪を乱暴になびかせる。ここから飛び下りるのを、歓迎してないみたいだ。