「ごちそうさまでした」

「ごーそうさまえした」



私を部屋の外に出せない理由。


例えば、ダディーは実は誘拐犯で、私が外に出れば警察にバレてしまうから、とか。

この世界はめちゃくちゃ危険だから、ちっちゃい子なんかすぐに死んでしまう、とか。


色んなことを想像するけど、あくまで想像に過ぎない。



「じゃ、ご飯返してくるから、待っててね」

「あい」



返してくる、ってことは、ダディーの他にも人がいるんだろうな。

ご飯を作ってくれる、それも、私が食べるような離乳食を作ってくれるということは、その人も私の存在を知っているんだろう。多分。


まぁ、詮索したところで何の意味もない。


私がどう頑張ろうと、出してもらえないなら出してもらえないし、その時が来たら出してもらえるんだろう。


一生ここで何不自由無い暮らしをするのも、悪くないし――自殺する前の生活より、よっぽど。



「ただいま」

「おたえり」



帰って来たダディーの手には、皿に乗った白い塊があった。前世の記憶と擦り合わせると、それは、ケーキに似てる。



「ラティア、今日でラティアはね、三歳になるんだ」

「おお!」

「反応が良いね。理解してる?」



一般的な三歳児は、誕生日と言われてもピンとこないことが多いのかな。でも、おめでたいことなので飛び跳ねながら拍手。



「これ食べようか、美味しいよ」

「あい!」

「食べ終わったら――――ちょっと、出掛けようか」



ダディーの言葉を咀嚼して、それが、外に出るという意味なんだと気付いたのは、ケーキらしき物を食べ終わった時だった。