「おいで。」
シドが両腕を広げた。
アリスは恥じらいながらも、シドの腕の中にすっぽりとおさまった。
シドはアリスの顎を上げ、唇を塞いだ。
とろけそうな、シドの口づけ。
離宮で過ごす最後の夜は甘く、静かに過ぎて行った。
ーー
「…お元気で。」
翌朝見送りに来てくれたルノアールとミアに別れの言葉を言った。
本当に楽しかった。また、シドと共にここへ来たい。
馬車に乗り込もうとした時、遠くから馬の走る音が聞こえてきた。
馬車の窓を見ると、一人がこちらへ向かって走ってきた。
シドが馬車から降りると、やって来たのは城の騎士だった。
「…シド様!急ぎお伝えする事が。アステルへ向かわせた者より伝言です。アステルでは今国民達の暴動により、城が襲われているとのこと!」
騎士の言葉に、アリスは扇子を落とした。
シドは報告を受けると、黙り込み考えた。
そして、
「…城へは戻らない。これから私とアリスはアステルへ向かう。」
シド…
アリスとシドは急ぎアステルへと向かった。



