「…毎年アステルに届けてるんだぁ!」
妹の方がニコッと微笑んで言った。
「…あなた達の名前は?」
「私はヘレン。こっちは妹のナタリー。直ぐにでもアステルへ届けたいんだけど、今は入国出来ないの。」
ヘレンの言葉にアリスは馬の手綱を離した。
「入国出来ないって?」
「この間アステルに行ったら、薬屋のおばちゃんが教えてくれたんだ。今は来ない方がいい。多分入国も出来なくなるって。おばちゃんもいつもの様子が違ってなんだか暗かったよ。」
アリスは手をギュッと握りしめた。
やはり、アステルでは今何かが起こってるんだ…
アステルは平和な国だ。
小さな国で育てられる食物にも限りがあり、貿易はなくてはならない事だ。
それなのに、入国が出来ないだなんて….
「そろそろ行くね。バイバイ」
二人の姉妹は手を振ると行ってしまった。
「…アリス。」
シドはアリスの肩に手を当てた。
「大丈夫。。ルイ様達からの知らせを待つわ。」
離宮へ戻ると、ダイニングには暖かい料理が用意されていた。
「着替えてくるね。」
アリスは二階へと上がりドレスを着替えた。
髪をハーフアップにして、少し化粧も直した。
…駄目だ。今日はせっかくシドが休みを取りここへ来ているんだ。
それなのに、私がアステルの事ばかり気にしていては、シドに申し訳ない。
何か連絡が入るまで、考えないようにしよう。
どのみち、私にできることはないんだから。。
ダイニングへ降りると、蝋燭の灯りが優しく輝いていた。
席に着くと、二人だけでグラスを交わした。



