Christmas Rose

その朝のことは、あっという間に城中に知れ渡った。

シド様とアリス様が仲睦まじそうに二人ベッドの上で向き合っていた。


今までのマルヴィナとシドの噂話は何処へやら。

この噂話は、西の棟にもすぐに知れ渡った。


…バンッ!!

マルヴィナは扇子を床に叩きつけ、眉間にシワを寄せた。


「…やっと乳母が城から去ったというのに、シド様は私ではなくあの女の部屋を訪れるなんて…!」


ギリッと手を握り締めた。


「…絶対に、負けはしない。」


その日の午後、アリスは庭園のバルコニーに座り、景色を眺めていた。


「…アリス様、いかがなされました。」

背後からエドが声をかけてきた。


「…いや、この季節よく狩りに出ていたなと思って。」

まだギルティに来てほんの数週間なのに

アステルにいた頃のことが随分前のように感じる。


「…そうですね。お優しい貴方様は本当は狩りがお好きではなかった。」

エドの言葉にアリスは振り返った。


「.…この国では無理に自分を作る必要はありません。」


アリスはふっと微笑んだ。

そうだ。狩りは好きではなかった。

政治も、剣術も。


母国は今、どうなっているのだろう。。