Christmas Rose

「・・俺の母は俺を産んですぐに亡くなった。アシアが母代りだった。」



部屋に戻ると、二人で涼しい夜風が吹きこむバルコニーへ出た。



「湖のほとりで話したのは、アシアの事だ。実の母の事は何も覚えていない」



―厳しいが太陽のように優しい人だ―



持病がこれ以上悪化しないようにと、城を出たそうだ。

今までずっと、お傍で支え続けたとか。


シドを残し一人先に城を出る事がどんなに辛かっただろう・・。



「お優しそうな方でしたね・・」


すると、シドはふっと微笑んだ。


「そうでもない。昔は厳しかった。だが、剣術の後は擦れた手のひらに薬を塗ってくれた」


懐かしそうに話すシドの横顔。


うらやましい。。

例え乳母でも、母のように愛情を注いで育てた事が分かる。


「・・アシアはいつも言っていた。強い人間より優しい人間になれと」



シドはアリスを見下ろした。


「・・アシアの教えを守り、俺はこの国を治めていくつもりだ。力を貸してくれ、アリス」


そしてそっとアリスの頬に手を当てた。



「・・・はい。」


アリスは自分の声を聞いて驚いた。


こんなにか弱い女の声がまだ自分からも出せるのかと。。