部屋で乱暴に荷物をまとめるエレーナの所へ国王がやって来た。


「エレーナ、出て行くのか。」


「…ここへ戻ってきたことが間違いでした。ここは地獄です。子供を産まなければ役立たず扱い。やっと産まれた子は取り上げられて、まるで私は機械だわ。」


カバンを閉じると、エレーナは振り返り涙を拭った。

「…エレーナ、本当にすまなかった。許してくれとは言わない。」


「ええ、もちろんそうでしょう。私はここを去るけれど、もしまた私の様な想いを誰かにさせたなら、今度こそこの国を滅ぼしてやるわ。」


エレーナはそれだけ言うと城を後にした。



馬車に乗りのみ出発すると、レイドとシドが馬車の前に出て止めた。


エレーナはカーテンを少しだけ開けた。


「母上…」


「貴方の言う通り、私は自分の為に貴方を利用したわ。最低な母親でごめんなさい。リエルを幸せにしてあげて。」

それだけ言うと、エレーナはシドと目が合った。

エレーナは少しだけ微笑むと、何も言わずに馬車が動き出した。


2人の兄弟は母親が乗ったその馬車を、見えなくなるまで見送った。