漆黒の髪と同じ色の瞳。
長身の男性がシドの前にやって来た。
「…早かったな、ランス。」
ランスと呼ばれた男性はシドの隣のアリスに気がつくと、膝をついて深々と頭を下げた。
「初めましてアリス様。シドの従兄弟、ランスと申します。」
従兄弟って…
「…ルイの兄だ。」
シドの言葉にアリスは驚いてもう一度ランスを見た。
「…見て!ランス様よ!!」
ランスに気がついた周りの人達によって、あっという間に囲まれてしまった。
ルイ同様、すごく人気…
「…ランスはいつも色々な国に留学に出ている。この城へ戻ってきたのも4年振りだろう」
シドは少々呆れたように言った。
4年振り…
もしかして、この人がシドが言っていた頼りになる人…???
音楽会が終わると、ランスは王に挨拶をする為、シドと王室へ向かった。
アリスはマグの執務室のドアを開けた。
相変わらず資料があちこちに散乱している。
「おかえりさいませ。」
積み上げられた資料をバラなかないよう部屋に入った。
「…シド様はまだ音楽会ですか?」
マグは書類に目を通しながら言った。
「ううん、ランス様という方と王に挨拶に行かれたわ。」
バサバサバザー
アリスの言葉に、マグは持っていた書類を床に落とした。



