「・・私はずっと母の言葉に苦しめられてきた。それなのに、今自分も同じ事を考えてしまうなんて・・・。」
「焦る気持ちも分かる。俺だってそうだ。だが、俺はアリスを政治の道具にはしない。俺を、少しだけ信じてくれ。」
真っすぐな瞳で言うシドに、アリスの頬は赤く染まった。
信じてる。シドだから・・・。
「・・レイド様が王の子じゃないということは、国王には・・?」
「まだ言うつもりはない。言ったとしても今の父上は王妃の見方につくだろう。」
国王は王妃様がいなくなってしまった事でずっと自分を責めていた・・。
「・・しかしこのままにしておくわけにはいかない。だから、本意ではないが頼りになる者を呼んである。」
頼りになる人・・・?
・・カタッ・・・・。
「・・誰だ?!」
ドアの向こう側。誰か人の気配を感じた。
シドが扉を勢いよく開けたが、人の姿はなかった。
シドは表情を歪め誰もいない廊下を見つめた。
***
翌日、午後の日差しが気持ちの良い頃、ホールには貴族達が集まり音楽界が開かれていた。
アリスもシドと一緒に美しい音楽の音色に、耳を傾けていた。
演奏が終わると、貴族の人達が次々とシドへ挨拶に来た。
そんな中、レイドの周りにも人だかりが出来ていた。
王妃様が、王位継承権がレイド様にもあると発言して以来、たった一晩で貴族たちのレイドに対する態度も大きく変わった。
ふと、一人ハープの演奏を聴くリエルの姿が目にとまった。
「まぁ・・!本当なの・・?レイド様が。」
リエルの元へ向かおうとしたとき、夫人達の会話が耳に入った。
「・・本当よ!国王様の子供じゃないってみんな噂しているわ。」
「・・・!」
アリスは夫人達の会話を聞いて、思わず振り返った。
「・・なんでも城下の牧師と王妃様の間に生まれたんだとか・・」
グッ・・
思わず、アリスは夫人の肩を掴んだ。
「・・アリス様?」
「今の話しは……」
「ああ、レイド様の事ですね。ここだけの話し、出所が何処なのかは分からないけど、これは確かな情報のようですよ」
夫人達はそう言うと笑いながら行ってしまった。
昨日、扉の外から感じた気配は…
「・・昨日の話を盗み聞きしていた者の仕業だな。」
シドが小さな声で呟いた。
「シド・・!」
「・・牧師の事までバレていることはおかしい。まずいな・・噂はすぐに広まってしまう。」
バタン!!!
すると、突然ホールの扉が勢いよく開いた。
「・・・久しぶりだな、シド」



