「・・私なんて事口走ってしまったんだろう。」
執務室を出ると、アリスは立ち止まり呟いた。
あんなに苦しんできた母親の言葉が、まさか自らの口から出てしまうだなんて・・・
「・・内心一番焦っているのは王子だと思います。そんな時にアリス様を気遣える我が主は立派だと思いました。」
本当にそうだ・・。
私、最低だ。
「・・大丈夫です。シド王子を信じましょう」
ゼノの言葉にアリスも頷いた。
部屋に戻りネグリジェに着替えると、アリスは窓辺で膝を抱えて蹲った。
シドはまだ仕事をしている。
こんな時、王子の妃という立場で何をしたらいいんだろうか・・。
アステルにいた頃は誰かに支えられる立場だった。
表には立たず、陰で大切な人を支えるということが、こんなに難しいことだとは思わなかった。
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「・・・リス、アリス。」
「・・っ」
身体を揺さぶられ、目を覚ますと呆れた表情をしたシドが。
「・・・こんな所で眠っていたら風邪を引くぞ」
そう言って自分の上着をアリスにかけた。
「・・ごめんなさい・・。シドを待っていたくて。。」
時計を見ると2時過ぎだ。
少し寝ぼけながら言うアリスを見てシドはふっと微笑んだ。
アリスの手を握ると、そっと抱きしめた。
「・・さっきはキツい言い方をした。すまなかった。」
耳元で囁くシドにアリスは首を振った。



