美しく、心優しいエレーナは王宮内では夫人達の憧れの的だった。
しかし、それ以来部屋に閉じこもり公の場には一切出ようとはしなかった。
月日は流れ、シドの2歳の誕生日。
すくすくと成長し、その容姿はエレーナそっくりだった。
シドの誕生日のお祝いは城で盛大に行われた。
「・・エレーナ様。。シド様のお誕生日のお祝いは・・」
メイドが話しかけると、エレーナは外を眺めた。
その夜、何年ぶりかに舞踏会へ参加した。
久しぶりの美しい姿のエレーナに参列者も見惚れ、国王もとても嬉しそうだった。
そして、シドがホールへやってきた。
久しぶりに会う我が子はちゃんと自分の足で歩いて、まだ2歳だというのに招待客にお辞儀をしていた。
そんな姿にエレーナの心は強く締め付けられた。
「・シド様。皆さまからの贈り物ですよ。」
アシアはプレゼントを一つシドへ手渡した。
シドは嬉しそうにぬいぐるみを抱きしめた。
「・・・っ。。」
「シド様。これはお母上のエレーナ様からですよ。」
アシアはエレーナからのプレゼント、50種類の絵の具とパレットを手渡した。
シドは嬉しそうに包み紙を開けた。
「・・・シド・・・」
エレーナの声に、シドが振り返った。
きょとんと大きな瞳で母親を見上げる。
シド・・私のシド・・・
エレーナはそっとシドへ手を伸ばした。
「・・アシア~」
すると、シドはパレットを手放しアシアの元へ走って行った。
そして、まるで知らない人を見るよな目でアシアのドレスにしがみ付きながら母であるエレーナを見つめた。
・・私の、私の子なのに・・・
私がこの手で育てたかった・・・・!



