「でさ、ミナミは会社を辞めたとして次のアテはあるの?」

「アテねぇ。結婚でもするかな。」

「えー!シュンキさんと別れたばっかじゃないの?」

カズエは目を丸くして身を乗り出した。

「なんかね、最近結婚したいなって思ってる。もちろんもらってくれる相手がいてくれればの話しだけど。」

「それにしても、結婚したいから会社辞めるなんて、かなりのチャレンジャーね。一心不乱に婚活でもするわけ?」

私は笑った。

「そんなことしないわよ。ちょっとね、思い切ってぶつかってみようかなっていう相手が見つかったから。」

「そうなんだ。まだうまくいくかどうかはわからないのね?」

「うん。本当にぶつかる勇気がその時に出るかどうかもわかんない。だけど、今はその人のそばにいたいって無性に思うの。」

「へー、恋しちゃってるじゃん。うらやましいねぇ。結婚したら恋なんておさらばなんだから、せいぜい今を楽しんでよ。」

「そんなこと言われたら結婚する気失せるじゃんか。」

私はカズエの腕をつついた。

「楽しみに待ってるよ。ミナミが幸せになる日を。」

カズエは少し真面目な顔をして言った。

「ありがとう。気長に待ってて。」


何事も口にするのはいいことだと思う。

今までふらついていた気持ちが誰かに言うことで決意に変わる。

会社を辞めるってことも、結婚したいって気持ちも伝えたらそのままにできないものね。

言葉には責任があるから。

カズエに話したら、少し勇気がわいたような気がした。