近づいてくるカイトに向かって叫んでみるも、なぜだか自分のその声はとても小さかった。

その声が聞こえたのかどうかわからないけど、突然カイトは私から離れた。

「ばーか。冗談だよ。」

そう言うと、頭をくしゃくしゃと掻きながら立ち上がった。

冗談?冗談にしちゃすごくシリアスだったけど。

カイトは私に背を向けて立っていた。

どんな顔をしてるのかわからない。ただ、カイトの背中はとても寂しそうだった。

「遅くなってごめぇん。」

カイトが立ち上がったのとほぼ同時だっただろうか。

ハルカがよたよたと部屋に入ってきたのは。

カイトも私もギョッとして、思わず顔を見合わせた。

「あれ?立花さんもいたんだぁ。ミナミ先輩寝てたぁ?」

幸い、かなり酔ってるらしいハルカは目つきもトロンとしていて、今どういう状況かも把握できてないらしかった。

「じゃ、俺部屋戻るわ。」

カイトは逃げるように部屋から出て行った。

ハルカはカイトが出て行った先をしばらくぼんやりと見つめていた。

「ハルカ、随分酔ってる?」

自分の気持ちを落ち着かせるために、話しかけた。

ようやくハルカの視線が私を捕らえた。

「ああ、うん。随分飲んじゃったみたいで、さっきまで寝ちゃってたの。ミナミ先輩はどうしてたぁ?」

「私も少し寝てたわ。」

「そう。私も寝ようっと。あれ?ミナミ先輩お布団敷いてる。ミナミ先輩のだけ?誰が敷いたの?」

酔ってるわりに色々と突っ込むなと思いながら。

「さっき、カイトが様子を見に来てくれて、とりあえず布団敷いて寝かせてくれたの。」

「ふぅん。」

さすがにトイレまで連れていってもらったとは言えなかった。