「ハルカちゃんは、今日は一泊できそう?俺が言うのもなんだけど。」

えらく女性に気を遣ったカイトもまた意外な感じだった。

「はい、母には事情話して承諾得てみます。ただ、男性が一緒だって言うと色々ややこしいから、ミナミ先輩とってことにしていいですか?」

そう言って、ハルカは私の目を見た。さっきの話がまるで予行演習みたいだった。

「ああ、いいよ。必要なら電話に出るから言って。」

「ありがとう。じゃ、早速電話してきます。」

ハルカは玄関から奥の方へ歩いて行った。

「はぁ、まさかここまでひどい雨になるとはねぇ。」

思わずうなだれる。

「だから、早く帰ろうって言ったんだ。」

カイトは私の肩を押した。

「もうしょうがないよ、今更言ったって。とりあえず、どこか宿予約しよう。」

シュンキがカイトを促した。

カイトがスマホを見ながら、適当な宿を探していく。

「ここは?結構安めの宿。ここからも近いしさ。」

「ほんと、いいね。温泉もついてるし。」

「おい、ミナミ、まだ入る気かよ。」

そう言いながら、カイトは電話を入れた。

幸い、その宿は部屋に空きがあるらしかった。

カイトが電話を持ったまま私たちに尋ねる。

「一部屋?二部屋?」

「もちろん二部屋でしょ。」

シュンキが答える。

「でも、一部屋の方が健全じゃない?」

カイトがチラッと私を見た。

「いや、二部屋とって、男女別れたらいいでしょ。」

シュンキが言った。

そうだよね。そりゃそうだ。

そのシュンキの解答になんとなくホッとした。

「ああ、そうだね。」

なんとなくカイトもホッとした様子でまた宿の人と話を続けた。