「あら、こちらは?」
お母さんが今度は部長に気付いて、にこやかな笑顔を向ける。
「挨拶が遅れました。二葉さんの上司の相原と申します」
「まぁまぁ、そうですか。いつも二葉がお世話になって」
あっくんのように、どうして上司がなんていう疑問は、全く感じなかったようだ。
話の流れが別のほうへ向いてくれたようで、ひとまず胸を撫で下ろす。
「今すぐお茶を淹れますからね」
「あ、お母さん、部長は仕事中なの。だからお引き留めするのは……」
早くこのシチュエーションから抜け出したくて、部長の都合を盾にする。
そうでもしないと、この場を収めることができそうになかった。
「あら、そうなの? それは残念ね……」
「突然お邪魔して申し訳ありませんでした」
丁寧に頭を下げると、帰り支度を始める。
「仕事のほうは心配しなくていいから。ちゃんと治してから出ておいで」
玄関まで見送ると、部長はそう言い残して去って行った。



