パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを


作り笑いがほんの一瞬崩れて、あっくんが真顔になる。

……どうしたんだろう。
何だか、あっくんまで変だ。

嫌な顔合わせに、頭がクラクラしてくる。


「あら、二葉ちゃん、寝ていなくていいの?」


妙な空気の中、今度はお母さんが帰宅した。
どうしてこうも立て続けに……。


「お母さんまでどうしたの?」

「どうしたもこうしたも、二葉ちゃんが心配だったから、早退させてもらったのよ。って、篤哉もなの!?」


あっくんを見つけて驚く。


「母さんが早く帰って来るなら、もう少し仕事してくればよかったかもね」


あっくんは、私を見て含ませたような言い方をした。


「……アツヤ?」


隣で部長がポツリと呟く。
そのひと言に、鼓動がドキリと大きく刻まれた。

お願い、思い出さないで。
気づかないで。
私が寝言で口走った『篤哉』を……。

人知れず、ギュッと拳を握る。