パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを


「……二葉の兄です。いつもお世話になっております」


手に持っていたカバンを下ろして、同様に頭を下げるあっくん。


「上司の方が、わざわざ部下のお見舞いですか?」


どこか棘のある言い方だった。


「あ、いえ……その……」


どう答えたらいいのか困って、部長が私に視線を投げ掛ける。
けれど、正直に『彼氏』だと紹介できない私。


「し、仕事は? どうしてこんなに早いの?」


話をすり替えるというズルい手段に打って出た。


「ちょうどキリのいいところだったし、二葉が寝込んでいたからな」

「妹さん思いなんですね」


部長の様子がどこかおかしい。
口元は笑っているのに、目は笑っていなかった。


「いえ、そういうわけでもないんですけど」