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「このあと、付き合えるか?」


ブルガリの腕時計とはいかなかったけれど、早目の誕生日プレゼントをゲットして大満足の私に、少し戸惑うような眼差しが向けられた。

夕方もいい時間。
人の多くなってきた歩道を歩きながら、あっくんの言葉に心が揺れる。

このあと、付き合う……?
……え? 何だろう。

訳もなく鼓動が早歩きを始める。
あっくんの誘いにまたもや、よからぬ期待が顔を持ち上げた。

兄と妹の一線を越える。
そんなありもしない妄想を一瞬のうちに作り上げて、「……う、うん」なんて口ごもった返事になってしまった。

そして、あっくんに連れられてやって来たのは、同僚と何度か来たことのあるフレンチレストランだった。
そこは、いつもあっくんが連れて来てくれる店よりも、ちょっと値の張るところだ。
そうなると、いくら打ち消しても期待が膨らんでしまう。

何か大切な話でもあるのかな。
本当に告白だったらどうしよう。

高鳴る鼓動を隠し切れなくなる。
四人用のテーブルに、あっくんと向かい合って座った。
私たちの他にも数組のお客が、すでにテーブルに着いている。