伸びて来た指先は、私の頬をスッと撫でた。
ちょっと冷たい指だった。
なぜかほんの一瞬だけ、トクンと鼓動が高鳴る。


「一緒に飲んでて、隣で眠られたのなんて初めてだよ」

「あ……す、すみません」

「いや、俺は、相手を相当退屈させる男ってことだ」


自嘲気味に笑って見せる。


「いえ、そういうわけでは……」


慌てて繕おうにも、何をどう言い訳したらいいのか。
確かに、男の人と飲んでいて、その場で眠ってしまったことはないけれど、それは純粋に眠かっただけだ。

それにしても、いつの間にみんなは帰ったんだろう。
琴美も私のこと置き去りにするなんて、ひどすぎやしない?
あれだけ私がいなかったら寂しいなんて言っておきながら。


「起してくれればよかったのに」


小さく呟いた私のひと言に、「気持ち良さそうに眠ってたからな」と、部長が上着を羽織って呟き返す。