「やっと戻って来られたね」


待ってたんだよと言って、琴美が大袈裟に私に抱きついた。

部長に別れを告げてから一ヶ月後、部長は元の役職に戻ることができて、それからしばらくして、私も本社に戻ってきたのだ。
といっても、私は部長とはフロアも違う、別の部署。
総務部への異動だった。

持って来た荷物をデスクに片付けると、待ってましたとばかりに、琴美が私の手首を掴んで、通路へと引っ張り出した。


「ね? 言ったでしょう? 社長だって、いつまでも相原部長をあのままにしておくわけがないって。社長の娘もやっと気が済んだみたいだね」


琴美が嬉しそうに話す。

本当にそうだったらよかったのに。
社長が娘のわがままに付き合うような人じゃなかったら……。


「……違うの」

「え? 何が違うの?」


琴美は目を瞬かせて、私の顔を覗き込んだ。
部長と別れたことは、琴美にさえ言えずにいたから、琴美が不思議そうにするのも無理はない。


「部長とは別れたの」