◇◇◇
何度掛け直しても、繋がらないスマホ。
繰り返し聞こえてくるのは、「電波の届かない場所か電源の……」という機械的な音声だけだった。
もうすぐ二十三時。
こんな時間まで電源を落としたままって、一体どういうことなんだろう。
あの女性と、まだ一緒にいるってこと？
私に部長との別れを迫った女性と……？
ベッドの上で膝を抱えた。
いつの間に眠っていたのか、スマホの着信音で目を開けた。
ぼんやりとする視界の中、ディスプレイに浮かんだ名前に慌てて通話ボタンを押す。
『連絡、遅くなってゴメン。メールに気づかなかったよ』
やっと聞けた部長の声だった。
“何時になってもいいから、連絡ください”
送信したLINEをやっと読んでもらえたのだ。
『もう寝てただろ？ 悪かった』
「いえ、大丈夫……です」
浮かんでは消える、部長と並んで歩く女性の姿。
言葉を探して、つい黙り込んでしまった。
