パッシングレイン 〜 揺れる心に優しいキスを


◇◇◇

丸一日かかって終わった、机の整理。
下のほうに埋もれていたのは、もう何年も前の書類で、ほとんどがゴミ同然のものばかりだった。

処分する書類を段ボールにひと通り詰め、そろそろ帰ろうかと思っていたときだった。
「お疲れ様です」という声と共に、事務所の扉が開かれた。


「――部長!」


驚いて声を上げる私に、「よっ!」と軽く手を挙げる。


「どうしてるかなと思って」


久しぶりというわけでもないのに、部長の顔を見られただけで、涙が零れてしまいそうになる。
それを必死で抑え込んだ。


「おや、相原くんじゃないかね」

「菊池部長、ご無沙汰しています」


面識があるのかな。
部長は、菊池部長に深く頭を下げた。


「相原くんの活躍は、こんな場所にいても耳に入ってきてるよ」

「いえっ、活躍だなんてとんでもない」